「産業医面談はオンラインだけでも大丈夫ですか?」
「遠方の産業医と契約して、面談をWeb会議で行っても問題ないのでしょうか?」
オンラインで産業医面談を行う企業が増える一方、「どこまでオンラインでできるのか」「オンラインだけで産業医業務を完結できるのか」は分かりにくいところです。
結論として、産業医面談や産業医業務の一部は、一定の条件を満たせばオンラインで実施できます。一方、職場巡視など、実際に現場へ行く必要がある業務もあります。
また、オンライン面談を始めた場合でも、本人の状態や面談内容によっては、対面での確認が適していることがあります。
この記事では、厚生労働省が示している要件をもとに、「オンラインでできること」「現地対応が必要なこと」「企業が準備しておくこと」を実務的に整理します。
オンラインでも産業医面談は実施できる
厚生労働省は、一定の留意事項を満たせば、産業医として選任された事業場以外の場所から、情報通信機器を用いて産業医の職務の一部を実施して差し支えない、という考え方を示しています。
そのため、健康相談、休職・復職に関する面談、長時間労働者への面接指導、高ストレス者への面接指導、人事担当者との健康管理に関する打ち合わせなど、内容に応じてオンラインを活用できます。オンライン産業医面談の仕組みを検討する企業も増えています。
ただし、「一般的な産業医面談」と「労働安全衛生法に基づく医師による面接指導」では、確認すべき要件が異なります。後者は、長時間労働者や高ストレス者など、法令上の対象者に対して事業者が実施するものです。オンラインで行う場合も、厚生労働省が示す留意事項を踏まえる必要があります。
法定の面接指導を
オンラインで行う場合のポイント
法定の面接指導をオンラインで行う場合、会社担当者が押さえておきたい実務上のポイントがあります。
産業医に仕事や職場の情報を提供する
オンライン面談だからといって、本人の顔だけを見て判断するものではありません。厚生労働省の通知でも、事業者は面接指導を実施する医師に、事業場の概要、仕事内容、労働時間などの勤務状況、作業環境に関する情報を提供しなければならないとされています。
同じ「疲れている」という訴えでも、デスクワーク、介護、夜勤、運転、機械操作、高所作業では、必要な配慮は異なります。画面越しに話せることだけでなく、産業医が本人の仕事を理解できる情報を持っていることが、オンライン面談の質を高めるうえで重要です。
できれば職場や本人を理解している医師が望ましい
厚生労働省の通知では、面接指導を実施する医師について、次のいずれかに該当することが望ましいとされています。
- 対象労働者が所属する事業場の産業医
- 過去1年以上、契約に基づいてその事業場の日常的な健康管理を担当している医師
- 過去1年以内に、その事業場を巡視したことがある医師
- 過去1年以内に、その労働者へ指導等を行ったことがある医師
これは、初対面の医師が禁止されている、という意味ではありません。一回限りの画面上の面談だけよりも、職場や本人のことを理解している医師の方が、より適切な評価につなげやすい、という趣旨です。
オンライン面談では「顔が見えること」が重要
法定の面接指導では、医師が労働者の表情、顔色、しぐさ、話し方、声色などを把握し、円滑にやり取りできる方法で行う必要があります。
そのため、映像と音声の送受信が安定していることが前提です。電話のみでは、法定のオンライン面接指導としては認められません。
誰にも聞かれない場所を用意する
オンライン面談で重要なのが、本人が安心して話せる環境です。通信環境だけでなく、第三者に内容が知られない場所を用意してください。
- 個室を使う
- 他の社員が途中で入ってこない
- 音漏れを防ぐ
- 自席からの参加を避ける
- 会議予約名から相談内容を推測されにくくする
メンタルヘルス相談では、上司、人間関係、退職などの話が出ることもあります。産業医面談では何を話すのかを考えるうえでも、安心して話せる環境があるかどうかは、面談の質に直結します。
通信環境とセキュリティ
厚生労働省の通知では、映像・音声が安定していること、操作が容易であること、情報漏洩や不正アクセスを防ぐことが求められています。心身の状態に関する情報を扱う場合は、アクセス管理、アクセス記録の保存、ソフトウェアの脆弱性対策なども適切に行う必要があります。
特定のビデオ会議サービスが推奨されているわけではありません。医療専用システムでなければ違法、というものでもありません。会社で使う仕組みが、安定してやり取りでき、個人情報を適切に守れるかを確認してください。
オンラインで十分に判断できないときは
対面へ
厚生労働省は、初回面談を必ず対面で行う、とは定めていません。一方で、オンラインで面接指導を行う場合でも、医師が必要と認める場合には、直接対面で実施する必要がある、とされています。
たとえば、画面越しでは状態を十分評価できない、意思疎通が十分に取れない、健康状態への懸念が大きい、複雑な復職判断が必要、仕事との適合性をより詳しく確認したい、といった場合には、対面を検討することがあります。休職から復職までの流れを考える場面でも、同様です。
「オンラインか対面か」をあらかじめ固定するのではなく、本人の状態と面談目的によって使い分けることが重要です。
オンラインだけではできない
産業医業務もある
産業医業務のすべてが、オンラインで完結できるわけではありません。オンラインでできる面談と、現地で行う必要がある業務を分けて考える必要があります。
職場巡視は実地で行う
産業医の定期巡視は、原則として少なくとも毎月1回、労働安全衛生規則で定める条件を満たす場合は少なくとも2か月に1回、産業医が実地で行う必要があります。
Webカメラで職場を映すだけでは、法定の定期巡視を実施したことにはなりません。巡視では、作業環境や作業内容をその場で確認し、必要な措置につなげることが求められます。
必要に応じて現場を直接確認する
厚生労働省は、オンラインで産業医業務を行う場合でも、産業医が必要と判断したときに、事業場で作業環境等を実地確認できる仕組みを求めています。
つまり、日頃の面談をオンラインで行うことと、必要なときに現場へ行けることとは、両立する考え方です。オンラインを使うほど、この「必要時に実地確認できる仕組み」が重要になります。
オンラインと訪問を
組み合わせるという選択肢
オンラインか訪問かを、二者択一で考える必要はありません。
オンラインには、移動時間が不要、遠方でも相談しやすい、急な相談にも対応しやすい、定期フォローを行いやすい、といった利点があります。
一方、訪問には、本人と直接会って話せる、職場の雰囲気を把握できる、仕事内容や作業環境を確認できる、会社担当者との調整をその場で行いやすい、といった利点があります。
そのため、オンライン面談、必要時の対面面談、職場巡視等の訪問を組み合わせることで、オンラインの利便性と現地対応のメリットの両方を活かせます。これは、厚生労働省が示す「必要に応じて実地確認できる仕組み」とも矛盾しません。
緊急時の対応まで決めておく
オンライン面談中に、医療機関への受診等が必要な状態が分かることもあります。過度に不安を感じる必要はありませんが、事前に連絡の流れを決めておくと安心です。
会社側の連絡担当者、産業保健スタッフ、近隣の医療機関、緊急時の連絡方法などを、あらかじめ整理しておくことが求められています。
衛生委員会への参加は
オンラインでも可能
一定の条件を満たせば、オンラインで開催される衛生委員会等へ、産業医が参加できます。すべての会社に衛生委員会があるわけではありませんが、設置している事業場では、オンライン開催のルールを確認しておくとよいでしょう。
オンライン面談でも必要な記録は残す
法定の面接指導は、オンラインで実施しても、所定の記録を残す必要があります。
一方、通常の健康相談や復職面談まで、法定面接指導と全く同じ記録義務が一律にかかるわけではありません。法令上の面接指導と、任意の産業医面談は分けて考える必要があります。
くるめ産業医事務所では
オンラインと訪問を
組み合わせて対応
くるめ産業医事務所では、オンライン面談だけに限定していません。オンラインで対応できる面談は、移動の負担を抑えながら、タイムリーに相談できる利点を活かします。
一方、直接会って確認した方がよい場合、職場環境を実際に確認する必要がある場合、会社との調整を現地で行った方がよい場合などには、訪問可能な地域であれば、対面・訪問での対応も検討できます。
「オンラインか訪問か」を最初から固定するのではなく、面談内容、本人の状態、会社の希望、職場環境に応じて組み合わせることができます。たとえば、まずオンラインで状況を確認し、必要に応じて訪問し、その後のフォローは再びオンラインで行う、といった進め方も可能です。
対応エリアは、久留米市を拠点に福岡・佐賀・熊本・大分です。オンライン面談は全国でもご相談いただけます。
企業が導入前に確認しておきたい
チェックポイント
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| オンライン面談 | 条件を満たせば可能 |
| 電話のみ | 法定の面接指導としては不可 |
| カメラ | 表情等を確認できることが重要 |
| プライバシー | 第三者に聞かれない環境 |
| 情報提供 | 仕事内容・勤務状況・作業環境等 |
| 必要時の対面 | 医師が必要と判断した場合は対面 |
| 職場巡視 | 実地で実施 |
| 緊急対応 | 連絡・医療連携の体制を用意 |
| オンライン+訪問 | 適切に組み合わせる |
まとめ|オンラインか対面か
ではなく、適切に使い分ける
オンラインによる産業医面談は、一定の要件のもとで活用できます。しかし、「オンライン産業医だから全部オンライン」ではありません。
オンラインが適している面談はオンラインで行い、対面で確認した方がよい場合は直接会い、職場巡視など実地確認が必要な業務は訪問する。このように、「オンライン」と「訪問」を適切に組み合わせることが重要です。
会社側も、産業医へ職場情報を提供する、安心して話せる個室を用意する、通信・セキュリティ環境を整える、必要時に対面へ切り替えられる体制を作る、現地で行う業務とオンライン業務を整理する、ことで、オンライン産業医をより実効性のある仕組みにできます。
くるめ産業医事務所では、オンライン面談だけでなく、訪問可能な地域では対面対応も組み合わせながら、会社ごとの状況に応じた産業保健支援を行っています。産業医サービスの内容をご確認のうえ、ご相談ください。
参考資料
- 厚生労働省「情報通信機器を用いた産業医の職務の一部実施に関する留意事項等について」(令和3年3月31日 基発0331第4号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5802&dataType=1&pageNo=1 - 厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」(平成27年9月15日 基発0915第5号、令和2年11月19日最終改正)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2176&dataType=1&pageNo=1 - 厚生労働省「面接指導を実施する医師の方」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00013.html - 厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第17条、第18条及び第19条の規定に基づく安全委員会等の開催について」(令和2年8月27日 基発0827第1号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc5324&dataType=1&pageNo=1 - こころの耳「ストレスチェック制度関係Q&A」(Q12-4)
https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/kaiseianeihou/qa/





