産業医がいない会社は健康診断後の就業判定を誰に頼めばいい?地域産業保健センターと民間産業医を比較

「健康診断で異常所見のある社員がいたが、会社には産業医がいない」

「健康診断結果について医師の意見をもらう必要があると言われたが、誰に頼めばよいのかわからない」

労働者数50人未満の事業場では、このような相談は珍しくありません。

結論からいうと、産業医を選任していない事業場でも、健康診断後の就業判定について相談できる先はあります。

代表的な選択肢として、次のような窓口があります。

  • 地域産業保健センター
  • 健康診断を実施した医療機関等
  • 民間の産業医事務所・嘱託産業医
  • 産業医紹介会社

特に、労働者数50人未満の小規模事業場であれば、まず知っておきたいのが「地域産業保健センター(地さんぽ)」です。

一方で、無料で利用できるからといって、すべてのケースで地域産業保健センターだけで対応できるとは限りません。

健康診断後に就業制限が必要となった場合、その後の社員面談、再評価、就業制限の解除、メンタルヘルス不調への対応などまで考えると、同じ医師に継続して相談できる体制が重要になるケースもあります。

この記事では、「地域産業保健センターでは何ができるのか」「民間の産業医に依頼する場合と何が違うのか」「会社の状況によってどう使い分ければよいのか」を分かりやすく解説します。

目次

産業医がいなくても、健康診断後の就業判定は必要です

まず、「産業医がいない会社なら、健康診断を受けて終わり」というわけではありません。

労働安全衛生法第66条の4では、健康診断で異常の所見があると診断された労働者について、事業者は、その労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師または歯科医師の意見を聴かなければならないとされています。

一般の定期健康診断等については、原則として健康診断が行われた日から3か月以内に医師等から意見を聴取し、その内容を健康診断個人票に記載します。

実務では、この手続きを「健診後の就業判定」「健康診断の事後措置」などと呼ぶことがあります。なお、法律上より正確な表現は、「健康診断結果についての医師等からの意見聴取」です。

医師の意見を踏まえて必要と判断される場合には、会社が労働時間の短縮や作業転換などの就業上の措置を検討します。

また、これとは別に、健康診断結果から特に健康保持に努める必要がある労働者について、事業者には医師または保健師による保健指導を行うよう努めることも求められています。意見聴取と保健指導は、役割の異なる対応です。

この記事では50人未満の事業場を主に想定しています

常時50人以上の労働者を使用する事業場では、原則として産業医の選任が法律上必要です。

そのため、この記事では主に、産業医の選任義務がない50人未満の事業場を想定して、健康診断後の就業判定を誰に依頼できるのかを解説します。

50人未満の会社には「地域産業保健センター」という選択肢があります

地域産業保健センターは、主として労働者数50人未満の小規模事業場を対象に、産業保健サービスを提供する公的な窓口です。

健康診断結果についての医師からの意見聴取のほか、地域や対象条件に応じて、次のようなサービスが実施されています。

  • 健康相談
  • 長時間労働者への面接指導
  • 高ストレス者への面接指導
  • メンタルヘルスを含む健康管理相談

基本的なサービスは無料で提供されています。そのため、「まず費用をかけずに、健診後の医師の意見聴取について相談したい」という50人未満の事業場にとって、非常に有用な制度です。

当事務所の産業医自身も地域産業保健センターの登録医・相談員として活動しており、久留米市を中心に、健康診断結果についての医師の意見聴取に実際に対応しています。

そのため、50人未満の企業から相談を受けた際にも、地域産業保健センターという選択肢があることをまず知っていただきたいと考えています。

地域産業保健センターは無料。ただし「いつでも・何度でも利用できる」とは限りません

ただし、「地域産業保健センターでは継続支援が絶対にできない」というわけではありません。

地域によっては継続支援につながる場合もありますし、2026年度には一部地域で、同じ登録産業医が職場巡視と健康診断結果の意見聴取を行うモデル事業も実施されています。

したがって、基本的なサービスの枠組みは共通していますが、利用回数、受付状況、継続利用の可否、対応時期などの運用面には地域差があります。

利用を検討する企業には、所在地を担当する地域産業保健センターへ、次の点を確認することをおすすめします。

  • 健康診断後の意見聴取に対応しているか
  • 何人まで依頼できるか
  • 利用回数に制限があるか
  • どのくらいの期間で対応可能か
  • その後の相談にも対応してもらえるか

企業が本当に困るのは「就業制限」と判定された後であることも多い

健康診断後の就業判定で重要なのは、「通常勤務可」「就業制限が必要」といった区分だけではありません。

例えば「就業制限が必要」という意見が出たとしても、会社側では次のような具体的な疑問が生じます。

  • 残業は何時間まで可能か
  • 夜勤を続けてよいのか
  • 交代制勤務は可能か
  • 重量物を扱わせてよいか
  • 自動車の運転業務を続けてよいか
  • 高所作業を行わせてよいか
  • 介護職で身体介助を続けてよいか

適切な就業判定を行うためには、健康診断の数値だけを見るのではなく、その人が実際にどのような仕事をしているのかまで考えることが重要です。

当事務所で健康診断後の就業判定を行う際には、必要に応じて、夜勤、交代制勤務、残業時間、運転業務、重量物取扱い、身体介助、高所作業、危険作業などを確認しながら判断します。

例えば同じ高血圧であっても、事務職、夜勤のある介護職、長距離運転を行うドライバーでは、検討すべき就業上のリスクが異なります。

就業制限が必要な場合には、「何を」「どの程度」「いつまで」制限するのかが企業側にできるだけ伝わるよう、実際の仕事内容に合わせて個別具体的にコメントを記載することを重視しています。

また、健診結果に応じて、受診勧奨や保健指導についても、必要に応じて具体的なコメントを記載します。意見聴取そのものと保健指導は別の対応ですが、判定結果を実務で使いやすくするため、必要な範囲で併せて整理します。

地域産業保健センターと民間の産業医事務所を比較

比較項目 地域産業保健センター 民間の産業医事務所(当事務所の場合)
費用 原則無料 有料
主な対象 原則50人未満の小規模事業場 事業所規模を問わず相談可能
健診後の医師の意見聴取 対応対象 対応
保健指導・受診勧奨 対応する場合あり 必要に応じ個別コメント可能
就業制限の具体化 医師・運用による 職種や勤務形態を踏まえて個別に記載可能
利用回数 制限される場合あり 依頼・契約内容による
同じ医師への継続相談 必ずしも保証されない 原則同じ窓口・医師で継続可能
判定後の追加相談 地域・利用状況による 対応可能
就業制限解除の相談 利用条件等による 継続対応可能
メンタルヘルスへの対応 健康相談等として対応あり 精神科医の産業医が対応
オンライン面談 地域の運用による 全国オンライン対応可能
定期的な職場巡視 通常サービスとは別枠。一部モデル事業等あり 契約により継続対応可能
産業医契約への移行 公的支援サービス 必要に応じて契約可能

地域産業保健センターと民間サービスは、どちらが優れているというより、目的が異なります。

単発の健診後の意見聴取を無料で受けたい場合、地域産業保健センターは有力な選択肢です。

一方で、次のような場合には、民間産業医へ継続的に相談できる体制を整えるメリットがあります。

  • 就業制限が必要な社員がいる
  • 判定後も会社から相談したい
  • 制限解除まで同じ医師に見てもらいたい
  • メンタル不調も併存している
  • 今後、職場巡視や休復職対応もお願いしたい

民間サービスを検討する場合の目安は、料金プランでもご確認いただけます。

健診後の就業判定では、身体疾患だけでなくメンタルヘルスが関係することもあります

健康診断後の就業判定では、高血圧、糖尿病、脂質異常、肝機能異常などの身体的な異常所見が中心になります。

しかし実際の産業保健の現場では、次のような問題が一緒に見つかることもあります。

  • 最近ほとんど眠れていない
  • 精神科の薬を服用している
  • メンタル不調により欠勤が増えている
  • 健診結果だけでは説明できない体調不良がある

健診結果だけでは十分に判断できない場合には、必要に応じて本人面談を行うことも重要です。

当事務所では、精神科医・産業医が健康診断後の就業判定を行っています。そのため、次の流れまで同じ窓口で相談可能です。

  1. 健診後の判定
  2. 本人との産業医面談
  3. 就業制限
  4. 経過確認
  5. 制限解除

遠方の企業についても、オンライン産業医面談により全国対応が可能です。

地域産業保健センターと民間産業医をどう使い分ければよい?

基本的な考え方は、次のような自然な流れです。

  1. まず無料で利用できる制度を確認する
  2. 継続支援が必要になったら民間の産業医を検討する

例えば、従業員20名程度の会社で、年1回の健康診断について数名分の医師の意見聴取だけが必要、という場合には、地域産業保健センターへの相談を検討しやすいでしょう。

一方、次のようなケースでは、最初から継続対応可能な産業医へ依頼する選択肢があります。

  • 重度の高血圧等があり就業制限が必要
  • 1〜3か月後に再評価したい
  • 夜勤を再開してよいか判断してほしい
  • メンタルヘルス不調もある
  • 本人面談が必要
  • 会社側から継続して相談したい

無料か有料かだけで判断するのではなく、その後どこまで支援が必要になるかを考えることが大切です。

久留米・福岡で健康診断後の就業判定をお探しの企業様へ

地域産業保健センターは、50人未満の事業場にとって非常に有用な公的サービスです。まずは所在地を管轄する地域産業保健センターに、「健康診断結果について医師の意見聴取をお願いできるか」と問い合わせてみる方法があります。

そのうえで、もう少し早く判定してほしい、職種に合わせて具体的な就業制限を書いてほしい、判定後についても相談したい、本人との産業医面談もお願いしたい、制限解除まで同じ医師に対応してほしい、という場合には、民間の産業医サービスを利用する方法があります。

くるめ産業医事務所では、健康診断結果を確認したうえで、必要に応じて受診勧奨や保健指導に関するコメントを記載します。対応エリアは、久留米市を中心に福岡・佐賀・熊本・大分です。

また、就業制限が必要な場合には、夜勤、残業、交代勤務、運転、重量物取扱い、身体介助、その他の仕事内容を踏まえて個別に判断します。

判定後に企業から、「残業はどこまで認めてよいのか」「いつ再評価すればよいのか」「受診後、夜勤を再開してよいのか」といった疑問が生じた場合にも継続して相談可能です。

健康診断後の就業判定、産業医面談、その後のフォローまで、必要な部分だけご依頼いただけます。全国オンラインにも対応しています。

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