2026年9月、製造業の工場で行われた職場巡視の研修会に参加してきました。
以前、北九州市で職場巡視に関する研修会に参加した際には、工場内に潜むさまざまな危険や、職場巡視でどのような点を確認・指摘すべきかについて、スライドを見ながら学びました。
今回はそこから一歩進んで、実際の工場に赴き、製造現場の中を歩きながら職場巡視を行う実地研修でした。
目で設備や作業の様子を確認し、耳で機械音を聞き、実際の作業環境のにおいや空気感を感じるなど、五感を使って現場を確認していきました。
職場巡視では、資料だけでは分からない情報が数多くあります。
「この場所は思った以上に音が大きい」
「作業者と車両の動線が近い」
「この作業では、実際にはこの位置に立つのか」
そうしたことは、現場に立って初めて実感できます。
事故を「注意力」だけで防がない
工場内で特に印象に残ったのが、定路・定色・定品・定位置などの「5定」による管理です。
人や車両が通る場所、物を置く場所、区画の色などをあらかじめ明確にすることで、誰が見ても正常な状態と異常な状態を判断しやすくなります。
安全対策というと、「作業者が注意する」という話になりがちですが、人の注意力だけに頼るのではなく、そもそも間違いや事故が起こりにくい職場環境をつくることが重要です。
防じんマスクや局所排気装置を実際に見る
今回の研修では、防じんマスクのフィットテストについても学びました。
定性的な方法、定量的な方法を実際に確認し、マスクは単に着用すればよいのではなく、顔に適切に密着していることが重要であることを改めて確認しました。
また、ヒュームや粉じんなどの有害物質についても、マスクなどの個人用保護具だけに頼るのではなく、局所排気装置などを活用して、そもそも作業者が吸い込まない環境をつくることが大切です。
これまで教科書や資料で学んできた設備を、実際の製造現場で見ることができたのは、とても貴重な経験でした。
防災も「実際に動く」ことが大切
防災教育についても印象に残りました。
火災が発生した際に非常ベルを押す、消火器を使用するといった行動は、知識として知っているだけでは、実際の緊急時にすぐ行動できるとは限りません。
実際に設備を使い、体を動かして経験しておくことで、緊急時にも行動しやすくなります。
安全衛生教育は、資料を読んで終わるのではなく、実際に経験することの大切さを改めて感じました。
現場を見ることで、知識が「生きた知識」になる
今回の研修で一番大きかったのは、これまで勉強してきた知識を実際の現場と結びつけることができたことです。
局所排気装置、防じんマスク、作業動線、区画管理。
教科書ではそれぞれ別々の項目として学びますが、実際の職場では、それらがすべて一つの作業環境の中でつながっています。
現場を歩き、目で見て、耳で聞き、実際の空気を感じることで、教科書で得た知識が一段階「生きた知識」に変わったように感じました。
産業医として職場巡視を行う際にも、単にチェック項目を見るのではなく、実際にその場所で働く人の立場に立ち、
「ここで一日働いたらどう感じるだろうか」
「この動線に危険はないだろうか」
「この作業を繰り返した場合、健康への影響はないだろうか」
という視点を持つことが大切だと思います。
今回の研修で得た経験を、今後担当する事業所の職場巡視にも生かしていきたいと思います。

