今回の令和8年熊本地震では、工場や商業施設でも大きな被害が発生しました。
建物や設備の被害を目にし、改めて感じたのは、地震への備えは一度実施すれば終わりではなく、日頃から繰り返し確認しておく必要があるということです。
職場巡視で確認したい身近な地震対策
職場巡視では、転倒や落下によって従業員が負傷する危険がないかを確認します。
例えば、棚やロッカーが壁や床に固定されているか、棚の高い位置に重量物や割れやすい物を置いていないか、避難経路や非常口の周囲に物が置かれていないかといった点です。
普段は問題なく使用できている棚や設備であっても、強い揺れが加われば、転倒や落下によって大きな事故につながる可能性があります。
特に重量物を高い場所に保管している場合には、落下した際の被害も大きくなります。
工場では大型設備や高所構造物の確認も必要
工場では、棚や備品だけでなく、煙突、タンク、ボイラー、配管、高所に設置された設備などについても確認が必要です。
こうした設備について、定期点検が適切に行われているか、金属部分に腐食や著しい劣化がないか、固定部分に緩みや損傷がないかを、平常時から確認しておくことが重要です。
産業医が建物や大型設備の耐震性を専門的に判定するわけではありません。
しかし、職場巡視の中で設備の老朽化や腐食、固定状況などに気づいた場合には、会社へ問題提起し、施設管理担当者や専門業者による点検につなげることができます。
今回の地震を通じて、老朽化した高所構造物や大型設備がある事業場では、耐震性だけでなく、経年劣化も含めた点検が必要であることを改めて認識させられました。
過去の地震対策が維持されているか
熊本では2016年にも大きな地震が発生しています。
しかし、地震から年月がたつにつれて、当時の記憶は少しずつ薄れていきます。
当時は棚を固定し、避難経路を確認していた事業場でも、その後の人事異動や設備の入れ替え、レイアウト変更によって、対策が不十分になっている可能性があります。
固定器具を一時的に外したままになっていたり、避難経路に荷物が置かれたりすることも考えられます。
また、防災訓練や設備点検が、いつの間にか形式的なものになってしまうこともあります。
だからこそ、過去に対策を行ったかどうかではなく、現在も対策が維持されているかを確認することが大切です。
地震の記憶を風化させないために
地震はいつ起きるか分かりません。
発生頻度は高くなくても、ひとたび起これば、従業員の生命や健康、事業の継続に大きな影響を及ぼします。
今回の地震を一時的な出来事として終わらせず、棚や設備の固定、重量物の置き場所、避難経路、老朽化した設備の状態などを、今一度確認する機会にする必要があります。
今回の被害を通じて、日頃の職場巡視や定期点検を積み重ねることの重要性を、産業医として改めて強く感じました。

